2008年05月20日

ニュースレターは、手作り感覚を忘れずに!

 今回は、手書き感覚のニュースレターの作り方についてです。
 あるギフトショップのニュースレターの事例でご報告しましょう。

印刷の仕上がりが、いい雰囲気がでています。
 
 囲みの罫線の太さが微妙に変わっていて、しかも太めの線になっている。チョット見ると手書きかなと思ってしまいます。   
 しかし、これは決して手で引いたものではないのです。ソフトで引いたものであるのは間違いがありません。また、題字後ろのグレーの部分は、濃淡が一定ではなく、荒れているようになっています。
 
この手作りのような雰囲気は、ニュースレターにとって重要なことなのです。それは、「わざわざ作っている」という気持ちを伝え、「少ない枚数だけ作っている」という「仕掛け」なのです。
 
クレジットカード会社からの請求書には毎月たくさんのカラーチラシがはいってきます。あのような美しい印刷物を、よく行く店の店長が作って、郵送でくれたとしても、嬉しいでしょうか? 「何だ、何かのチェーン店か」っていう風に、何か組織的な売り込みの仕組みの存在を感じてしまい、いやーな気持ちになるものです。

 最近のコンビニエンスストアは、カラーコピー機があり、モノクロ印刷もそれでできます。結構それを使っている方もいらっしゃいます。しかし、黒いところがオイルで光っているので、手作りの雰囲気がでません。
 
モノクロのコピー機でも、最近のデジタル機は、改良が加わって美しく、シャープに印刷されるのは良いのですが、美しすぎてかえって人間味がないように思えます。以前のアナログのコピー機は、線がまっすぐでなく、微妙に波になっていたり、かすれがあったりして、今となっては懐かしく思います。

私はデジタル機のシャープ感が嫌いで、展示会で配布するニュースレターは、わざわざ3回くらいコピーして原稿を荒れさせ、手作り風に仕上げたこともあります。

 では、どうしたら、手作り風になるのでしょうか?

 その秘訣は、コピー機ではなく、「リソグラフ」(理想科学工業鰍フ製品)という、インクを使う印刷機を使うことです。あの、年賀状でよく使う「プリントゴッコ」を発売している会社の製品です。

 この「リソグラフ」という機械は、昔小学校には必ずあった、手で回してテストや学級便りを刷っていた、「謄写版」と同じ原理の「孔版印刷」と呼ばれる仕組みになっています。いわゆる「ガリ版」です。
 
「ガリ版」は、専用の紙に、針のようなペンで、キズをつけて版を作っていましたね。間違えたら、赤いインクで修正して、乾いてから再度書いてました。
 
「リソグラフ」は、そのガリ版と全く同じ原理で、「がり版」があります。
原稿を紙で作ったら、それを工学的に転写して、ガリ版を作る部分と、インクを付けてローラを回すところが自動化されているだけで、原理はまったく変わりません。
 
インクを使うので、あまり薄い紙だと裏に写ったり、ベタ面がかすれたりするのですが、そこがかえって、暖かい雰囲気が漂います。
 
 塾や学校などは必ず持っていらっしゃいますが、プリントショップさんなどで頼むことができます。1枚3〜5円程度で刷ってもらえると思いますヨ。

(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」13号 2003年4月15日号より抜粋、加筆、要約)

2008年05月11日

コンビニもニュースレターを出している!

 近所のセブンイレブンが、昨年ニュースレターを発行しました。なかなかのできでした。
 まず、女子店員が書いたと思われる、手書き。そして、商品のコピーを、切り抜いてただ貼っただけという、手作り感。そして、その商品のすばらしさを、これまたこの制作者の言葉で語っているコピー。お知らせコーナーでは、FAXが全国50円で送れるなどと、さりげなく売り込み!

 この手書きのニュースレターというか、商品の売り込みしかないのですが、何とも味のあるというか、女の子特有の丸文字で書いてあると、不思議に売り込まれ感が消え、いっしょに笑っちゃいそうな気にさせられるから不思議です。
 うちの女子社員も、お菓子が大好きなので、見入っていましたからね。

 同じ物が、活字で、プロの手できれいにレイアウトされていたら、ここまで眺めません。

(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」10号 2003年1月15日号より抜粋、加筆、要約)

2008年05月10日

5歳児でも、手紙には心寄せる!

 1月13日の成人の日、5歳の息子に、「夕方6時に帰ってくるから、一緒に遊ぼう!」と約束して、休日出勤しました。しかし、結局仕事が終わらずに、6時どころか、翌朝2時ごろの帰宅となってしまいました。おまけに火曜日は大阪へ出張のため、朝6:30の新幹線に乗らなくてはなりません。そして、木曜日の深夜まで、帰って来ません。
 案の定、「パパが帰ってこない! 遊ぼうって約束したのにー! えーん!」と、8時ごろべそをかき出したとのことでした。

 約束を破ったパパとしては、顔を合わせられないので、謝ることもできません。そこで、家内の助言もあって、手紙を書くことにしました。

ひろくんへ

 ごめんね。かえりがおそくなってしまて。ひろくんとあそびたかったけど、どうしてもおわらなくって...。
 パパ、おしごとのすすめかたが、おそいから...。ほんとうにごめんね。
 もくようびの夜かえってくるね。おみやげかってくるからね
ぱぱ

 紙は、会社で使っているメモ用紙に、走り書きのように、ボールペンで書いただけのものです。ほんとうはもっとたくさん書きたかったのですが、あいにく手がつかず、やっとかいたものでした。

 これを、テーブルの息子のすわる場所に、置いておきました。

 私は、たったこれだけのことなので、すっかり忘れていましたが、二日後、家内からのメールをホテルの部屋で深夜読んで、涙が出てきました。

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宏樹は、あなたからの手紙を毎日何回も何回も見ています。
読めるのかどうかわかりません。
一度「読んで」といわれたので憶えたのかもしれません。

昨晩は、ばーばが風邪のため、泊まらずに帰りました。
昨晩も、今朝も、大切にしていました。
そばで見ていて、ジーンときます。
手紙をしたためるのはいいかもですね。

ちなみに、「お土産かってきますって、どんなのかな」
これにも、わくわくしていますから(笑)

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 「手紙」の力に、驚きましたよ。たった5、6行のメモ紙ですが、息子は大事に大事に、壁に貼って、眺めていました。

 もちろん、息子がかわいいと思ったことは言うまでもありませんが、会えない相手に、「手紙」を書くというのは、これほどまでに存在感があるものかと、思い知らされたのです。

(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」10号 2003年1月15日号より抜粋、加筆、要約」)

文章は書き手の癖をそのまま活かそう

 次に、文章です。これに苦労される方がたくさんいらっしゃいます。私だって、そんなに得意な方ではありません。最低5回は修正が入りますし、家内には「主語がない」「文章がおかしい」と、何度も指摘をされるような文章です。
 ご心配要りません。今は、ワープロという武器があります。とにかく書いてしまえば、直しはいくらでも効きます。躊躇せず、ドンドン書いて、あとで直しましょう。

 それから、書き言葉は、話し言葉が良いようです。私のこのニュースレターのように、語り口調。ですます調です。あたりがソフトになり、読み手がすんなりと入りやすくなると思います。(反面、断言しても、強く伝わらないので、もどかしい面もあります)

 次に、タイトル。会社が出していることをわかりやすくしようと、社名や店名をつけては、チラシと同じ扱いを受けます。これも、先の、自分の会社や店が、扱っている商品が、どのようなシチュエーションで使われると、もっともよいと思うのか、もしくは、もっとも嬉しい状態であるかを、まずは考えてみましょう。
 その、もっともすばらしいと思うものを、タイトルに含めてしまえばよいのです! たとえば、「おいしい通信」とか、「ニコニコ新聞」、「元気で健やか新聞」など、いいイメージを抱かせるタイトルです! これ考えるのって、楽しいですよ!

 では、あなたのチャレンジを待っています! 

(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」10号 2003年1月15日号より抜粋、加筆、要約」)

売り込みは絶対にしない

 ニュースレターで売り込みをしないと言うのは、大変重要です。大前提です。売り込みを一つでも入れると、他の情報の信憑性がなくなります。情報提供に対して、感謝の念を相手に持たせるには、正確な情報を教えてくれた、いうことがあって、はじめて成り立ちます。

 次に、ニュースレターを受け取った相手の感情を考えてみましょう。
 出した人がニュースレターを出すのは、何かの理由があるからです。何の理由もなく、作って出されても、受け手はその手紙をどう考えればよいのかに、困りますね。
 これを、スムーズに伝えるのに役に立つのが、ニュースレターを出す人が持っている「使命感」です。使命感があるからこそ、伝えたいことが出てくるのです。
 これを考えるには、すこしだけ、想像力を働かせてみて下さい。すごく簡単です。ご自分の会社やお店がお客様にお売りした商品が、お客様にとって、どんな良いことを実現するのに役立っているかを考えてみるのです。

 たとえば、食品スーパーの場合、買って頂いたお客様は、それを使って料理をして、家族に食べさせます。すると、料理をするお母様は、どんな気持ちを持って、その日の献立や調理をするのかということを、考えます。
 料理は、まず、「安全」でなくてはなりません。食中毒を起こすようなものや、将来体に悪いものを使っている料理は、どんな方でも食べたくないに違いありません。お客様であるお母様も、お子さまに「危険」のあるものを食べさせたいと思っているわけがありません。

 その次が、「美味しい」です。
 やはり、美味しいものを食べたいですね。言うまでもないことです。
 味付けが濃かったり、薄すぎてもイヤですし、第一家庭の味というものが、どの家庭にもあるわけです。

 そして、その結果、そのお宅の朝食や夕食は、「楽しい」ものになります。その楽しい食事があるからこそ、この家庭は「幸せ」ですし、「健康」も維持できます。

 そうです。食品スーパーが本当に届けているのは、食材だけではないのです。料理に必要な食材の提供を通して、家族の「幸せ」や、「楽しさ」、「健康」などを、お届けしているのです。
 そうすると、いかがでしょうか。その家族の幸せや楽しさ、健康などは、すべて扱うネタとなります。
 いくらでもネタがありますね。

 そうした、「家族の食生活を楽しくするための方法」や、「家庭生活をいかに楽しくするか」などにいつも気を遣っている、という姿勢を、お客様は評価するのですね!

(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」10号 2003年1月15日号より抜粋、加筆、要約」)

ニュースレターの鍵は「信頼」

 ニュースレターでもっとも重要なことは、「信頼関係」を作り上げることです。
 信頼関係を持つと、心と心を通わせ合い、お互いがお互いを理解した上で、はじめて双方が納得する、良い商売が成り立たせられます。
 一度買って頂いたり、会ったりした方に、このニュースレターを送ると、記憶に残りますし、第一、信頼度が格段に増します。購入にいたる、重要なステップに、この「信頼関係」が、販売の心理学でも上げられていますが、まさに、これを作り上げることが、10円もかからない印刷代と、80円の切手代だけで、構築できてしまうのです!

 おまけに、お客様の方から、「今度こういうことをやろうと思っているんだけど、見積もり下さい」と、電話をかけてきていただけます。
 電話がお客様から来るということは、すなわち商談成立の可能性が非常に高いと言うこと。はじめから、米つきバッタのようにお礼をしたり、何度もあしげく通って、注文をお願いしたりする必要もありませんから、値引きもなし。
 通信販売業では、ニュースレターやその他の情報誌を送ることなく、商品だけを送っただけで業績を上げている会社はないんじゃないかと思います。

 商品をせっかく買って頂いても、リピートが少ない、クレームが多い、などと言った事例は、枚挙にいとまがありません。私の会社でも、日々クレームが起こっています。しかし、そうしたことは、提供している商品が本当に原因であることは少ないです。リピートが少ないのは、単に売り方が効果的でないだけですし、クレームが来るのも、品質に問題がある場合を除き、それは商品の注文時に、お客様の要望を満たせていなかったり、適切な情報をお知らせしていないだけのことが多いのです。
 それは、お客様の要望をすべて聞き入れていなかったと言うことです。と言うことは、正しい情報を伝えて、理解していただき、ご納得頂くということが、できていなかったと言うことになります。そうして、何らかの行き違いや、情報が足りなかったということがあって、クレームになるのです。

 商品は、お客様が「欲しい」と言って、ご購入頂くものです。でも、売上げに苦しんでいる営業マンは、売ることしか考えていないから、商品について過大に表現したり、悪い情報をなるべく矮小化して、伝えようとします。売り込みの強すぎる営業マンは、こうしたことを日常的に行っているから、嫌われるのですね。

 正しい情報をお客様にお伝えすること。これが、商売を円滑にし、リピート客を増やすのです。

 では、「正しい情報を伝える」には、どうしたらよいでしょうか。それは、文章が一番だと、私は思います。文字だと、お伝えしたいことを、容易にしかも正確に伝えることができます。

 人間同士の会話は、単語のつながりが結構バラバラです。感情にも左右されてしまいます。聞き手が話し手の意図を正確に理解しているかどうか、怪しいものです。同じことを伝えるのでも、笑いながら言うのと、暗い顔で言うのとでは、受け取り方が全然違いますからね。

 笑いながら「鈴木さんから電話がありました」と言われれば、ああ、何か良い電話だなと、無意識に感じますし、逆に暗い顔で、「鈴木さんから電話があった」と言われたら、反対に何か良くないことでもあったのだろうかと、考えてしまいます。

 しかし、文章だと、整理された情報を載せるのですから、会話よりは自分の伝えたいことが正確に伝わります。おまけに、何度も読み返すことができ、後日まで残すこともできます。文字は、言ってみれば「デジタルな世界」ですから、会話の持つ「アナログ」なあいまいさを排除できます。

 さらに、もう一つ必要なことがあります。本当に意図をまっすぐ伝えるには、言葉が正確なだけでは、まだ足りない、と言うことです。何が足りないかというと、それは発信側と受け取り側に横たわる、「信頼関係」です。

 嫌いな相手から言われたことを、その言葉通りに受け取れるでしょうか。嫌いな相手からの話など、どんなに良さそうな話でも、疑ってかかってしまいますね。今日はじめて会ったばかりで、その人なりをまったく知らない相手からの言葉も、やはり信じられません。

 しかし、そうは言っても、何度も何度も会うことはできませんし、お金もかけられません。では、一体何をやると、商売で必要な信頼関係を構築することができるのでしょうか。

 それは、「お客様の期待以上のことをやること」です。

 ニュースレターは、お客様に送りますよと言って出すよりも、予告なく、お届けすることで、「おお、こんないい情報を、わざわざ郵便で送ってきてくれた」という気持ちを、お客様に持たせることができるのです。つまり、お客様として、大切に扱われている、というふうに思ってもらうことになります。これが、「信頼」を得るための第一歩なのです。

 そのほか、購入して頂いた相手に対して、お礼のはがきや、ささやかなプレゼントを贈るなどといったことも、大変効果があります。

 その中でも、私の経験では、この信頼関係を作るのに、ニュースレターは最高の道具です。単にお礼やプレゼントをするだけではできない、もっと深いモノを作ることができるからです。

(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」10号 2003年1月15日号より抜粋、加筆、要約」)

2008年05月03日

反応ゼロのDMが、400通で50万円以上の反応をとる

 紳士服店の事例です。
 Aさんは、年に数回DMを打っていたのですが、反応はほとんどゼロ。内容は新製品のチラシでした。
 相談されたときに、既存顧客のリストは数百件持っていらっしゃったので、これは絶対にうまく行くと確信しましたが、売り込みをしてはいけないという私のアドバイスには、最初かなりとまどいをもたれていました。
 しかし、できあがったニュースレターは、完全にプライベートなネタ。結果は、初回約400通で50万円の売上。中には、20万円以上も買って頂いた3年ぶりのお客様もありました。
 商品を売る前に、人間的な関係を作ることと、忘れられないようにすること、そして、商品のアフターフォローをも、80円のDMで、見事に実現できました。

 さて、今回の事例から、ニュースレターをこれから作ろうと考えている方へのポイントです。
 とにかく、出してみること。既存客に出すこと。そして、売り込みを絶対にしないこと。売り込みすると、読んでもらえませんし、反応もありません。
 出すと何らかの反応がありますから、それを見ながら、次のネタを考えれば大丈夫です。必ずうまく行きます! 文章が書けないと思っている方も、意外な文才を発見して、驚きます。誤字脱字は、お客様が教えてくれます(笑)!

(出所:田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」6号 2002年9月15日号より抜粋、加筆、要約」)

2008年05月02日

4万円のDM経費で125万円の売上

 ある日、社内システムだけをやっていた当社のWebデザインのチームが、社内の仕事が落ち着いてきたので、社外向けにも積極的に仕事を取ろうということになりました。

「デザイン制作部発足」という内容で、ダイレクトメール(DM)を郵送することにしました。
 しかし、開封してもらったうえに、実際の問い合わせなり注文なりと言ったアクションを起こしてもらうようにするには、いろいろな工夫が必要です。
 まず、DMの発送先は、不特定多数ではなく、私の名刺箱にある、名刺交換をしたことがある人たちの中から厳選しました。
 つぎに、封筒の表書きに私の似顔絵イラストを印刷し、「ごぶさたしております。田上です」と、下に書きました。
 内容も、練りに練って、イラストを全面に使って、親しみを感じさせる内容にしました。全部で300通ほど出しました。

●3社から反応があり、そのうち2社が実際の注文へ…。

 発送してから数日後、スグに反応がありました! 
 1社はかなり前に講演したときに、聴衆の一人だった、製版会社のディレクターでした。
似顔絵を見て、私を思いだしていただいた時、社内でできなかったホームページのプログラムの外注先を、ちょうど探していらっしゃいました。このときは、10万円ほどのお仕事を頂戴できました。

 もう1社は、以前勤めていた会社に出入りしていた、システムの営業マンからでした。「覚えてますか? ええ、いやあ、手紙をもらって、あんまり顔が似てるんで、思わず爆笑しちゃいましたよ!、ははははは」と、1年ぶりくらいでしたが、大変電話で盛り上がってしまいました。この営業マンは、ホームページ制作会社に転職していて、品質の高い外注先を探していました。24万円のお仕事を頂戴しました。

 あともう一つは、商社の営業マンから、印刷会社をご紹介いただきました。この商談は値段が合いませんでしたので、残念ながら注文にはなりませんでした。

 こんな具合に合計3件の反応があり、そのうちの2社から、注文をいただくことができました。その合計額は、約35万円。その後、1社からは継続的にご注文をいただいて、これまでの約1年間の発注額の合計は90万円。最終的に、この似顔絵DMは、切手代約30,000円で、125万円の売り上げとなりました。

● 本事例における成功のポイント
・ 封筒は開けさせる工夫が必要。
・ 発送先は、不特定多数ではなく、一度でも接触のあった人
・ 中身は「○○が発足!」と、お知らせのみ。売り込みチラシの封入はなし。

(出所:田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」1号 2002年4月15日号より抜粋、加筆、要約」)

2008年05月01日

40通のDMで72万円の売上

 福岡県のある市で、オーダーカーテンの施工・販売をされているAさんが、他地域から来た飛び込みセールスの安売り業者に勝てる方法を確立しました。
 たった40通のDMで、2件の注文をとり、72万円の売上を獲得。使った切手代3,200円のなんと225倍の売上です。

●同業者の飛び込み安売り攻勢で、成約率が落ち始めていた

 Aさんが住む市は、福岡市の中心部から電車で30分くらい、人口およそ65,000人の街です。ベットタウンとしてマンションや新築もたくさん建っています。Aさんは、新築の戸建てオーナーに、オーダーカーテンを販売されていらっしゃいます。スタッフはご自身のみです。商圏は隣の2町を合わせた1市2町域にほぼ限定しています。

 弊社でホームページを作らせていただきましたところ、ホームページを見た地域シェアナンバーワンの戸建て住宅会社から、安定的に紹介をもらえるようになったり、少し遠方ですが、富裕層の上客が見つかったなどと、明るい話題が多く、熱心に頑張っていらっしゃいます。

 その一方、少し前から他地域の同業者がわざわざ飛び込みで来るようになり、競合が激しくなって、直接営業で捕まえた個人客との商談の成約率が、1年前の3分の1に落ちてしまいました。最近は同業者の攻勢があまりにも激しくなったため、以前はリストの見込み客に電話をかけても感謝されていたのが、最近は、煙たがられるようになったそうです。

 Aさんは、営業から納品までをすべて一人で行う自営業ですから、売上ダウンは家計を直撃します。加入している青年会議所の活動も、糸島地区合併協議会の設置などで、大変多忙に。8時から9時までの、Aさんにとっての商談電話ゴールデンタイムも、つぶれることが多くなっていました。

●お願い電話をせずとも、注文電話を客にかけさせる方法とは?

 そんな悩みを抱えたある日、営業している中で、いつも考えていたメッセージをニュースレター(=売り込みのない手紙形式のDM)に託してみてはどうだろうかと、Aさんは思いつきました。
 そのヒントは、実は当会が毎月送っているニュースレター「紙とネット」(現:販促成功通信)でした。
 当社にお越し頂いて打合せを行い、内容をうち合わせました。
 2時間ほどの打合せを経て、このニュースレターに載せるべきことがはっきりしてきました。
 まず、最初は共感です。
 引っ越しするだけでも大変なことなのに、家を新築して、他の地域から越してこられる方ばかりです。新しい生活が思うようにできるかどうか、不安で不安で仕方がないのが、このAさんの商品の販売対象(=ターゲット)の方々です。Aさん自身も、10年前同じ立場でした。そのため、まずは私も同じ気持ちでこの場所に越してきました、良い場所ですから安心して下さい、というメッセージを挨拶として書きました。
 続いて、お役立ち情報です。
 2、3ページ目は、10年間住んだ結果、お勧めできる店の紹介です。引っ越してきたばかりで困るのは、買い物や子供が熱を出したときにどこに行けばよいのかです。そこで、美味しい食事ができる店や歯医者、クリーニング、歯科医、スーパー、生協、小児科などで、評判が良かったり、自身で利用して良かった店を取り上げて紹介しました。

 Aさんは、このようなニュースレターを作り、2月の始めに40通ほどを発送しました。
 その活用の方法をご紹介しましょう。
 まず、
@ リストに電話して雑談し、あたりが良さそうなお客さんを見つける
A あたりが良さそうなお客さんにカタログを送付
B しばらくしてから、このニュースレターを送る
という三段階の手順を踏んでいます。

 この結果、どうなったか。これまで、電話でさんざんやってきた、「見積を作らせてください」「安くしますよ」とお願い営業の電話を一切することなく、お客様の方から、「手紙ありがとう」と言って、5件の見積依頼があり、そのうちの1件から、40万円の注文が取れました。
 この1件の他に32万円のお客様も決まり、受注2件で合計72万円ほどの売上が確保できました。2号目、3号目と発行を続けて、成果が出ています。

 一番よかったのは、お客様から電話がかかってくる点でした。個人客へのセールスの電話は、夜8時から9時の1時間で、できるだけたくさんの電話をかけ、「密度の高い雑談」をして、どれだけ仲良くなれるかどうかが勝負といいます。個人のお客様が相手ですから、自宅に帰り、食事が済んで、ゆっくりしているのは、この1時間だけ。だから、雑談は真剣そのもの。赤ん坊の声がしたら、ミルクは何を使っているだとか、ゲームのピコピコ音がしたら、この間発売になったゲームの話を振ったりだとかという必死の努力があったのだそうです。

 これが、ニュースレターを送ると、この1時間の間に捕まらなかった人でも、自らかけてきてくれて、書いてあることだけで盛り上がってしまうため、ネタ探しが不要になり、商談が大変楽になったそうです。時には長話になりすぎて、困ることがあるくらいだそうです。

 この方法を試す前は、電話をこちらからかけると、どうしても「米つきバッタ営業」になって、「見積だけでも出させてくれ」なんてお願いしてしまい、相見積になったり、値切られたりしがちでした。

 このように、お客様の方から電話をかけてもらうことになり、見積を向こうからお願いされるセールス方法への転換を図ることができました。主導権は、電話を受けた方にありますから、無用な値引きも、交渉も減り、お客様から感謝されながら、商談が進行していくようになりました。つらかった商談電話が、楽しくなりました。

● 本事例における成功のポイント
・ ターゲットの困っていること、自身がそれを助けられるかどうかをまず検討。
・ ニュースレターに情報をまとめ、一度でも接触をした後に送付。
・ ニュースレターのネタは自身のオリジナル情報。

(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」0号 2002年3月15日号より抜粋、加筆、要約」)