小冊子による顧客集めの方法をご紹介しましょう。
住宅業界やカツラ業界、金融など、幅広い業界で、「今なら先着○名様に、小冊子をプレゼント!」というのが、よく行われています。
実は、このセールス法、「2ステップマーケティング」といって、高額商品を販売する場合に大変効果的な手法として、幅広く行われている販売手法なのです。
とにかく、見込み客が、簡単に集まってしまいます。小冊子を送った後、感想を聞いて、本当に興味があるかどうかを見極めてから、実際のセールスをします。あるいは、小冊子に案内書やセールスシートを同梱し、注文を受けてしまいます。飛び込みやのべつ幕なしにテレアポするのではなく、実際に興味があると手を挙げているので、セールスをしていても、商品を売り込まないといけないと言う感覚はなく、小冊子の中身についての話から始まるので、説得しなくてはならないストレスがないのです。
昭和40年代頃の日本の高度成長期やバブルの時代には、商品を作る側の方が力が強く、買ってくれそうなところに飛び込みで行けば、ドンドン注文が決まったと聞きます。今でも超成長期にある製品では、作ったら作っただけ飛ぶように売れていくという世界もあるようですが、昔のように、何でも売れたのとはワケが違います。
今はまさに不景気ですから、なかなかものが売れません。売れないどころか、一体誰がこの商品に関心を持っているのかさえも分からないのですから、セールスのしようがありませんね。しかし、この方法だと、セールスをすべき相手が、結構簡単に見つかってしまいます。商品を販売する際に、もっとも労力のかかる、買ってくれるかもしれない見込み客を探す仕事がすでに終わっていますから、あとは実際にセールスするだけです。
●さあ、あなたも小冊子を作ろう!
小冊子は、20ページでも、30ページでも大丈夫です。50ページ、60ページ程度あると、それなりの束冊子の厚さが出せますから、さらによいです。文字は12ポイントや14ポイントにして、大きくしたり、写真や図版を入れて、なるべくページ数を稼いでください。
価格もつけちゃいます。タイトルは、住宅会社なら、「欠陥住宅をつかまされない7つのポイント」とか、カツラなら、「あきらめないで!まだあなたの髪は増やせる!」、といった具合に、その悩みを持った人なら、欲しがるであろう情報が掲載されているものにします。本当に売りたい商品のことは、この小冊子の希望者を募る時点では、決して話してはいけません。小冊子内にも、書いてはいけません。とにかく、売り込みの臭いを消すこと。無料で差し上げる代わりに感想を聞かせて欲しいとか、アンケートに答えて欲しい、「私は業界の悪習に嫌気がさしたので、本当にユーザーのために活動している」、などと言うふうに、無料である理由も明示しておくことも、ポイントです。
形態は私の場合、A5サイズに製本したものと、製本せず、A3サイズを2つ折りにして小冊子印刷をしたものの2通りを実行したことがあります。どちらも無料進呈の返信の率は高いのですが、今ひとつ成功率が低い。もらった側が嬉しいと感じるのは、やはり製本したもののようです。予算が許せば、ぜひ外注してください。私も、小冊子の外注を準備しているところです。作りが良いと、その後の反応が異なるようです。おまけに、本棚に立てて、保管することもできますからね。中綴じや製本なしでは、そうはいきません。
小冊子をせっかく作っても、ほしがる人がいなかったらどうしようか? というご不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。それも払拭できます。作る前に、先にDMを出すのです。えっ、欲しいという人が来たら、どうするのかって? 請求者に対しては、「お待たせして申し訳ございません。請求者多数につき、予定を超えてしまいました。せっかくご請求頂いたのに、お送りできないのは何とも心苦しいので、現在増刷しています...しばらくお待ち下さい」などといった、ご案内を、ファックス同報で送っておけば良いのです。
これなら、配ることができなかった小冊子の山ができて、処分に困るという不安も解消できますね。
それでもリスクが大きいとお考えの方ならば、小冊子を自分で製本してしまうという方法もあります。実際に私はそうしました。ただし、私のものは中綴じだったので、高級感に欠けるという欠点がありました。
しかし、せっかくの見込み客も、成約になると数%〜20%。数打たないと勝負になりませんから、やはり、100〜200件くらい集めてからアタックしないと、商売にはならないというのも事実です。
仮に、1000部のA5版を作るとすると、本文・表紙とも1色で、レイアウト済みの原稿を入稿すれば、20万円はかからずにできるようです。見積もりを出入りの印刷会社から取ってみましょう。ワードで十分レイアウトできます。
さて、では、成功実例を見てみましょう。
●1人で800人の戸建て建築希望者を集める
まずは、ある土木業のZさんの例を見てみましょう。
Zさんは、実家の土建業を経営していますが、現在は土建業を廃業し、あるNPO法人を作り、欠陥住宅ではない、適正な価格の住宅を供給するための会を、今年から始めました。
この人のすごいのは、商品はまだないのに、会員だけは800人を超えて集めてしまったことです。最終的には1,000人を超えるでしょう。しかも、この方々は、この小冊子が欲しくて連絡してきた人ばかりですから、住宅建築を真剣に考えている人ばかりです。
今後は、この会に賛同する工務店も組織し、Zさんのノウハウで現場を監理し、本当に手抜きのない良質な住宅を建てるためのコンサルタント的な活動を行っていくことになっています。現在は準備段階ですが、これだけの住宅建築見込み客リストを1人で持っている人を、業界が放っておくとは思えないですから、必ずうまく行きますね。商品はなくとも、顧客を集めることができる、好事例です。
私は、サラリーマンを辞めて独立した時、最初に新規の顧客獲得のためには何よりも商品がないと、できるわけがないと単純に考えていました。しかし、今では考えは180度変わりました。商品を売る前に、先にお客を集めてしまうことができるのです!
800人の住宅建築見込み客は、一体いくらかけて集めたのでしょうか。100万円もかかっていません。小冊子14万円、広告代40万円、その他フリーダイヤルなどの通信費に10万円等といった具合。1人1,000円程度で、住宅建築を真剣に考えている見込み客が獲得できたというのは、住宅業界にとっては、極めて驚異。50万部のチラシで、現場見学会への集客が50人来たとしても、1人2〜3万円程度かかるわけですから。
この小冊子無料プレゼントの告知を、地元のタウン誌に出稿しました。
告知は、見出しがまず重要です。「子供を持つ30代のお母さん」、「マイホーム、私にはムリだわ」という冒頭の部分は、呼びかけとして、非常に重要です。
ガイドブックの無料進呈が最初に案内され、その後NPO法人の紹介と、ガイドブックを手に入れることによるメリットを、書いています。そして最後に、「お申し込みは今すぐ!」とあって、フリーダイヤルの番号に電話かファックスするように呼びかけています。
効果のある記事広告の必要な要素は、あまりパターンはありません。上のような要素を、同じ順番で書いて見てください。そして、記事のように見えるタテ書きレイアウトにするのも、重要なポイントです。
小冊子プレゼントの反応率を高めるには、このように、手紙のようなスタイルは最高に効き目があります。これ一つで、130件くらいの反応があったとのことでした。
地元紙の新聞記事にもなりました。記事はすさまじい反応で、電話がパンクしたそうです。2、3日間で400件くらいの資料請求があったとのことです。
電話の応対は、人間ではなく、留守番電話でOKです。これなら、無人で応対でき、後でゆっくりアルバイトに文書化させれば良いからです。
小冊子を請求した方へはニュースレターを出します。小冊子を受け取った人で、NPO法人の会員に登録を希望すると、ニュースレターが、無料で毎月送られてきます。
このニュースレターの目的は、信頼感の醸成です。Zさんの活動は、「非営利」です。使命感に燃えた、元土建屋のオヤジが、あまりにも多い欠陥住宅に嫌気がさし、本当に作る側も買う側もにっこり笑顔でひき渡しができる、本当の良質な住宅供給のために、人生を捧げているのです。そのイメージは、新聞の記事での紹介や、こうしたニュースレターの配信によって、作られて行くのです。
そして、Zさんは、良質な住宅を提供する執念に燃えた、本物の商売を追求する工務店だけを厳しく選別し、建築希望者に紹介をします。おまけに、引き渡しまで責任を持って、現場を監理し、決して欠陥住宅を作らないことを保証するのです。このサービスには、工務店からの紹介手数料という形での支払いでまかなわれます。これが、会の運営を維持していく収入となります。
効果を上げられる広告の、一つの成功手法を使って、お客を集めることができるかできないか。Zさんは、できるから、大きな構想を立てて、推進していくことができます。できなければ、もしくは、効果的な手法の存在も知らなければ、以前の私のように、売り込みに行って、玉砕していくばかり。私がもし手法を変えなければ、今頃は一家で路頭に迷っていることでしょう。
たった一つのスキルがあるかないかで、人生が天にも地にも落ちていきます。ぜひ、この小冊子による見込み客獲得法を、マスターして、不景気を乗り切ろうじゃありませんか!!
(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」5号 2002年8月15日号より抜粋、加筆、要約」)
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