新しいコストというのは、あまりかかっていないのです。かかったコストは、社長が頭を使ってアイデアをひねり出すためにかかった時間と、新しい版下をデザインしたり、印刷したりするコストだけ。それも、すでに注文を受けたお客様に向けてのみ出しますから、本当に少ない部数で、効果的にメディアを活用されています。
顧客はシニア層。50歳から上の、すでに子供が育ち上がった夫婦などが対象です。販売は印刷物の配布と、コールセンターでの受注。現在の主力製品は健康製品です。これらの商品が今、ヒットしています。
新規顧客を獲得するための広告は、新聞広告やチラシ、他社通販の納品パッケージへのチラシの折り込みなどです。こうした販促手法は、通販会社としては良くやっていることで、特に目新しいものではありません。
社長に7月初旬に本社でお邪魔して聞いたところ、実行したアイデアのうち、やったことを聞いてみたところ、大きくわけると2つしかないとおっしゃいます。
@ 社長以下、全員の似顔絵を作った
A その似顔絵を使って、お客様からみて、親しみ度を増すように印刷物を改良した
これだけだそうです。
もちろん似顔絵は、当会オリジナルの、似顔絵師「つっちぃ」が描く、全身ポーズ付きの、コミカルな似顔絵「わたしキャラ」です。
最初、似顔絵はニュースレターに使いました。以前の似顔絵は、プロが描いたものではなかったので、それをまず替えました。これは、売り込みを目的にしたニュースレターではありませんでしたので、特に反応が増えたというものではありませんでした。
次に、今年の3月から、似顔絵入りのお礼の手紙を商品が着いた数日後に着くよう出すことにしました。これで、未払い代金の督促が減った上に、発送漏れもスグに分かり、顧客満足度の向上に大いに役立ったとのことです。
さらに、商品サンプルを入れるパッケージをつくりました。全社員の似顔絵を入れたものです。これを、商品の最初の発送時に同梱することにしました。すると、2割の率で、注文が入るようになりました。以前は同梱していませんでしたから、ここで生まれた注文は、そのまま売上げがプラスになりました。
●アンケートはがきが5倍以上に増える
さらに、アンケートはがきを改良しました。アンケートはがきは、以前の担当者名も何もなく、「あなた様のお声をお聞かせ下さいませ」として、ただ社長行きとしていました。これを、担当者の名前と似顔絵入りのものにし、選択式のアンケートにし、書き込み欄を減らしました
この結果、アンケートはがきの返信が、以前は一日に数通だったものが、30通ほどと、5倍以上に増えました。以前は数十通だったのが、月に500通来るようになったのです!
量が多くなっただけではありません。お客様からのアンケートの内容が、商品に関するものだけだったのが、担当者を名指しで、感謝の言葉がつづられるようになるなど、大きな変化がありました。
はがきを見ると、顧客が書いている文面が、明らかに変わっています。以前は単に、感想だけを「独り言」のように書いてあるだけでしたが、お客様からの声が、まるで個人的な知人への手紙のように、明らかに「語りかけ」になっています。
文面には、商品を使った感想や、感謝の言葉が入るだけでなく、身の上話や家族の話題までもが入るようになりました。読んでいて楽しくなってしまいます。
「以前からも、お礼のはがきが来たら、手書きの返礼をお出ししていました。以前だと、つぶやきのようなものしか来なかったので、書く側もどうしても通り一辺倒にしか返答できませんでしたが、身の上話やコラムへの感想なども書いて頂けるようになって、読んでいて本当に楽しいし、返事を書く方も身が入るようになりました」。
返信は封筒で、プレゼントといっしょに送付しています。もちろん、返信は、1人1人に、すべて手書きで対応しています。
このほかにも、最初のお届け時に商品と同梱する社長名のお礼の手紙を改良しました。以前のものに比べ、文面をかなり「馴れ馴れしく」(社長談)書き換え、似顔絵をつけたとのことです。受け取った顧客にとっては、親しみ度が上がったのでしょう。これで、その後のレスポンスが大いに上がったそうです。
「以前も似顔絵はニュースレターにつけていましたが、それほど良いできのものではなく、こうした印刷物に使おうという発想は出てきませんでした。しかし、このつっちぃの似顔絵だと、いろんなものに使おうと言うアイデアが出てくるのです。この似顔絵をつけると、つけるだけでも印象ががらっと変わります。すると、この似顔絵なら、文章もこうしたほうがいいなとかいうふうな考えが出てくるので、結果的に個人のパーソナリティーを全面に出した、馴れ馴れしい文面ができました」(社長談)
同社社長は、通信販売事業をより高いステージに引き上げたいと、今年初めから朝6:30に出社時間を早めてアイデアをひねり出し、実行した結果、このような成果を出したのです。
「家から歩いて5分のところに会社があるので、6時半に出社して、みんなが来るまでの朝の時間は、本当にじっくりと考えが巡らせられます。これをやるようになってからですね。」(社長)
広告費を大幅に増やすことなく、新しい社員を入れたわけではなく、印刷物の改良と、ちょっとした工夫で、大きな成果が上がる。これができるようになるには、まずは改良をやってみるしかない。やった結果、小さく成功すると、次はこれ、その次はこれと、次々とアイデアが湧いて、一つ一つ実行しているうちに、ドーンと大きな成功にぶつかったのです。
もちろん、うまく行かなかったアイデアも出てくるでしょうが、それにめげることなく、実行していくと、必ず成功にぶち当たる。実行するのみですね。結果は、実行しないと出ませんからね。
アンケートはがきを見ていますと、これだけ商品に満足されたお客様が、いわば「ファンレター」を、毎月数百枚も送られてくるというのが、なんとすばらしいことかと思います。社員は、これを励みにして、次の仕事に前向きに取り組むことができます。今回社長とともに、インタビューさせて戴いたスタッフさんも、本当に楽しそうにお話されていました。
(田上恭由執筆「商売繁盛デザイン研究所 ニュースレター」4号 2002年7月15日号より抜粋、加筆、要約」)
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